2017/10/10

浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 亀の真実編

 
浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 脱走編

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前回のあらすじ

 

浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 乙姫vs人魚編

乙女を探していた凛太郎は彼が助けた大きなウミガメに出会い、乙姫がいるかもしれない場所を聞き出すことに成功する。

その場所で無事乙姫と再開した凛太郎は、ちょっとしたことで乙姫と言い合いになる。

先に宴に戻った凛太郎だったが、先のダンスで仲良くなった人魚の遊梨ゆうりにもてなされていた。

そこへ乙姫も戻ってきて凛太郎をめぐる三角関係が出来上がりつつあった。

宴も終焉しゅうえんを迎えようという時に、凛太郎へのお土産を取りに行った乙姫から大絶叫が響き渡る。

凛太郎はそこへ駆けつけるが……

 

浦島凛太郎

 

乙女の悲鳴を聞いた凛太郎は勢いよく部屋の扉を開けた。

そこにいたのは……

顔は死人を思わせるほど真っ白になっていて、床に崩れ落ちた乙女がいた。

それも致し方ないことなのかもしれない。

彼女が失ったものは代々リュウグウ王国に伝わる家宝だったのだ。

 

「乙姫様、申し訳ありません。私の落ち度でございます」

 

放心状態でへたばっている乙女の前で五体を投げ出し、地にひたいをこすりつけているダイオウイカ(礼装着)が何度も何度も乙女に対して謝罪していた。

先程まで給仕やシェフ、演奏やダンスをやっていた魚たちがダイオウイカ(礼装着)の後ろで同じようなポーズを取っていた。

 

突然の事態に戸惑う凛太郎だが、切迫した空気を感じた彼は状況把握に徹しようと近くにいた従者に尋ねる。

 

「えっと、ヤバイ状況なのは何となくわかるけど、どうしたんだ?」

「そ、それが、リュウグウ王国に伝わる家宝がなくなってしまったそうなんです」

「おい! よそ者にそんなことを言うことではない」

「も、申し訳ありません」

 

凛太郎に状況を話してしまった従者は、乙女に土下座をしたままのダイオウイカ(礼装着)に一喝されてしまう。

 

「いいじゃないか、それくらい」

「それくらいとは何です! 我が国にとっては一大事なのでありますぞ。それに凛太郎殿にも聞きたいことがあります」

「何だ?」

「イ、イーカ大臣!!」

 

凛太郎とイーカ大臣が言い合いになって、イーカ大臣が凛太郎に疑いの目を向けそうになった時に放心状態だった乙女が正気を取り戻して叫ぶ。

イーカ大臣はキィッと睨む乙女を真っ向から受け止めて首を横に振る。

 

「乙姫様、この一大事にひいきは出来ませぬ」

「でも、凛太郎様は今日来たばかりじゃないですの。そんな人を疑うなんてあんまりですわ」

「いいえ乙姫様、凛太郎殿が今日来たばかりであっても、この国の情報を知っていれば関係ありませぬ。もしや、かの国のスパイ……」

「いい加減になさい!! 凛太郎様はそんな方じゃありません。そんな方じゃ……イーカ大臣、あんまりですわ。ひっぐ、ぅぅ」

 

乙女が何を言おうともイーカ大臣は凛太郎を疑う姿勢を崩さない。

そして、大臣の推測が飛躍し始めた時、目に涙を浮かべた乙女は体を震わせながら抗議する。

乙女の涙で静寂が訪れる部屋で凛太郎はなんとも言えない顔をしていた。

そんなやり取りを見かねて口を出すことにした。

 

「なぁ、乙女? 俺のこと信じてくれるのはすごいうれしいんだが、大臣の言うこともわかるからさ。

それで、イーカ大臣だっけ? 俺を無視して話を勝手を進められるのも気分が悪いし、俺に聞きたいことがあるんだろ? 言ってみな」

 

優しく乙女に話しかけていた凛太郎はスゥっと目を細めてイーカ大臣に話を促す。

イーカ大臣は凛太郎の目を見た瞬間、もし下手なことを言ったら素っ首をはねられるかもしれないという錯覚を覚えた。

ぶるっと身を振るわせて、イーカ大臣は凛太郎の視線に押しつぶされそうになりながらも口を開いた。

 

「り、凛太郎殿は我が国の家宝のことについて何か知っていますかな?」

「いいや、知らないな」

「そうですか、しかし、その言葉をまるっきり信用するわけにも参りませぬ。もし凛太郎殿さえよろしければ、身体検査といくつかお聞きしたいことがあるのですが」

「それくらいいいぞ」

 

凛太郎はイーカ大臣たちの疑念を受けても全く動じることなく、彼らの提案を受け入れる。

では、身体検査からと言って部下に身体検査を命じるイーカ大臣。

 

さわさわさわ。

 

「大臣、特に異常ありません」

「ふむ、では凛太郎殿、ここに来てから凛太郎殿が訪れた場所を全てお答えいただけますかな?」

「はあ? そんなの覚えてねぇよ」

 

身体検査が終わり、何も問題なかった凛太郎にイーカ大臣は到底答えられるはずのない質問を投げかけた。

普通に考えたら、初めて訪れた場所で、乙女を迷うように探索したその場所まで正確に覚えているはずがないのだ。

凛太郎は当然答えられない。

 

「そうですか、では凛太郎殿には申し訳ありませんが少しの間、監視が必要になりますのでご了承ください」

 

イーカ大臣はそう言うと、部下に命令して凛太郎を拘束しようとする。

乙女もこの対応にはさすがに驚いたのか声を上げずにはいられなかった。

 

「イーカ大臣! それはやりすぎですわ!」

「お言葉ですが乙姫様、これは当然の処置でございます。コヤツがかの国のスパイという疑念は完全に払拭されておりませぬ。どうかご理解を」

 

目に涙を浮かべる乙女に向かってイーカ大臣は片膝をついて頭を下げる。

次いで凛太郎の方を向いて頭を下げる。

 

「どうかご理解を」

「決まりなら仕方ないな、わかったよ」

 

凛太郎は渋々イーカ大臣の指示に従って両手を差し出す。

部下も失礼しますと言って凛太郎の両手に手錠をはめて地下牢へと連行する。

 

「凛太郎様、ごめんなさい、ごめんなさい……」

「気にするな、乙女が悪いわけじゃないだろ」

「……うぅ、ぐすん」

 

膝をつき手で顔を覆い隠し、肩を震わせて涙する乙女に凛太郎は笑顔を送るが泣き声しか返ってこなかった。

 

 

 

じゃらじゃらじゃら。

両手にはめられた鎖を鳴らしながら凛太郎は地下牢へと連れられていた。

先程までとは別世界に思えるほどの光景が広がっていた。

視界を埋め尽くす薄青色に染まった壁面と天井。

空の見えない天然の迷路はどこまでも途切れることなく四方八方に続いている。

牢獄というよりは洞窟と言ったほうがしっくりくるかもしれない。

二股道、十字路、緩やかな階段などを登ったり降りたりしたそこには、無数の鉄格子が並んでいた。

 

「入れ」

 

イーカ大臣は鉄格子の中へ凛太郎を突き飛ばして言う。

先程までとは別人の顔をのぞかせるイーカ大臣。

 

「ずいぶんと人柄が変わったな」

「何のことですかな? キサマは少しここでおとなしくしておいてもらいますぞ」

 

イーカ大臣はそう言い残して地下牢をあとにする。

 

 

薄暗い空間には凛太郎以外誰もいない。

両手につながれた手錠を見下ろしてため息をつきながらこれからのことを考える。

 

「さて、どうするかなぁこれ。とりあえずっと」

 

特に気にする様子もなくおもむろに両手につながれた鎖を引きちぎった凛太郎は、パラパラと落ちる鎖の破片を見下ろして辺りを見回す。

常人には聞き取れないほど遠くからの足音だったが、浦島流格闘術を免許皆伝した凛太郎は何百メートルも離れた足音を聞き取ることができた。

さすがにこの鉄格子を壊すのは時間がかかりそうだと面倒くさそうにしていたら、ひたひたと足音が聞こえてきた。

 

「この足音は……」

 

聞き覚えのある足音のする方を見つめていると、見覚えのある人物が出てきた。

 

 

 

 

「どういうことなの! 答えなさい!」

「どう、と言われましても。私は私の仕事をやっているだけなのですがね」

 

とある密室で遊梨とイーカ大臣は言い争っていた。

 

「彼には手を出さないって言ったじゃないの!」

「何じゃおぬし、やつに惚れたか?」

「くッ!」

「ふはははは、そうか、惚れたか。だがしかし、もうやつはここから出られない。かの国のスパイになってもらわないとならぬからな」

「? ど、どういう……ま、まさか……!」

 

ドゴッ!

イーカ大臣の真意に気づいた遊梨はイーカ大臣によって気絶させられてしまう。

倒れゆく遊梨を背にしてイーカ大臣は言い放つ。

 

「今までご苦労でしたなぁ。さぁーー総仕上げといきますかな」

 

 

 

 

「助けに来ましたわ」

「キ、キミは!」

 

凛太郎のもとに現れたのは彼に助けられたあの大きなウミガメだった。

 

「どうしてキミが!?」

「リ、リンタロー様が捕まったと聞いたもので。助けにきましたわ」

 

そう言ってウミガメは牢屋の鍵を取り出して笑う。

凛太郎はその笑顔がある人物と重なって思わず名前を呼んでしまった。

 

「乙、女……」

「えっ?」

 

凛太郎の突然の発言に驚くウミガメは口に手を当てて困惑していた。

 

「あっ、いや、ごめん」

「ど、どうして……」

「えっ、い、いやぁ、キミの笑顔が乙女の笑顔とかぶって見えて…」

 

ウミガメはどこか罰が悪そうな顔で頬をかきながら答える凛太郎を見てポロポロと涙を流しだした。

その泣き方にも見覚えのある凛太郎はまさかという思いでもう一度尋ねてみる。

 

「乙、女…なのか?」

「……」

 

無言を肯定と捉えた凛太郎は驚きをあらわにした。

凛太郎の驚嘆きょうたんとともにウミガメの姿が乙女へと変化していく。

乙女は目に涙を浮かべながら太陽のような笑顔で嗚咽混じりにお礼を言う。

 

「あり、がとう、ございますわぁ…」

「ど、どういう…こと、かな?」

 

次に困惑するのは凛太郎の番だった。

突然の出来事に理解が追いつかない。

 

「話はあとですわ。まずはここから出ないと」

 

乙女は涙をぬぐって鍵の解除作業に戻る。

乙女に手を引っ張られながら地下牢の階段を登る凛太郎はふと繋いだ手を見る。

その手には凛太郎が包帯代わりに巻いた袖の切れ端がしっかりと巻かれていた。

それを見た凛太郎は走りながら乙女に聞く。

 

「腕、もういいのか?」

「えっ? あっ!」

 

慌てて繋いでいた手を引っ込める乙女は走りながら布の切れ端をそっとなでる。

それを見た凛太郎はひょいっと乙女を持ち上げて走り出す。

横抱きーーいわゆるお姫様抱っこというやつだ。

 

「えっ、えっ! り、凛太郎様!?」

 

凛太郎の突然の行動に乙女は顔を真っ赤にして凛太郎の胸の中でキューッと縮こまっている。

 

「しっかり捕まってて」

 

そう言うと、ぐんぐんとスピードを上げて長い長い階段を登っていく。

入って来たときは1時間近くは歩かされたが、ものの数分で出口の光が見えてきた。

出入り口近くまで来た凛太郎たちは外の様子を伺おうとして物影に潜む。

外の様子がおかしい。

失ったリュウグウ王国の家宝を探すにしても慌ただしすぎる。

凛太郎は聞き耳を立てていると聞き覚えのある人物の怒声が聞こえてきた。

 

「探せええぇぇぇ! この一大事に姫様まで行方不明になるとは何事かあぁぁぁぁぁ!」

「イーカ大臣、どこにもおりませぬ」

「ふざけるなぁ、もっとよく探してこいぃぃぃ! クソォ、乙姫がいなければ…これまでのことがすべて……」

 

血相を欠いて乙女を探しているイーカ大臣はその他従者たちに激号の指示を飛ばしていた。

おそるおそる乙姫がいない旨を伝えに来た従者に怒声を浴びせ、はいぃぃ! と走り去っていく姿を見つめながら小さくつぶやく。

凛太郎がどうやらキミを探しているらしいと乙女に伝えると彼女は凛太郎にある提案をする。

 

「凛太郎様、どうかこのままお逃げください」

「は? えっ? 逃げ…逃げる? 俺が?」

「そうですわ。この混乱状態はチャンスですの」

「でも、乙女。家宝は? 大切なものなんだろ。探すの手伝うっつても捕まって助けられた身で何が出来るのかって話だが、それでも盗んだやつくらいは見つけないと」

「大丈夫ですわ。家宝なんかよりもわたくしは凛太郎様が大切ですの。だからお逃げください」

「でも……」

 

凛太郎が反論しようとするのをさえぎって乙女は凛太郎の手を握りしめて涙ながらに懇願する。

 

「お願いですわ。お願い、します…わ。もう、もうあんな思いは嫌ですの」

 

凛太郎がどういうことなのかという顔で乙女に続きを促すと、乙女は思いの丈を打ち明ける。

 

「わたくしは何もできなかった。凛太郎様が、大切な方が連れ去られてしまうというのに、ただ見ているだけしかできなかった。そんなのもうたくさんですわ。だから、どうか、どうかわたくしの願いを聞いてもらえませんか? わたくしの自己満足なのは承知の上ですの。それでも、わたくしを助けていただいた恩を何も返せていませんの。むしろ招待しておきながら幽閉するという恩を仇で返すような真似までしてしまって……それにかの国が関わっているなら凛太郎様にも危険が及ぶかもしれませんの。だから、お逃げください」

 

凛太郎は乙女の思いを聞くと優しい笑顔を浮かべ、乙女の頭にぽんっと手を乗せて一言。

 

「わかった。俺がおまえを守る」

「は?」

 

絶句する乙女に向かって凛太郎は得意げに答える。

 

「俺に助けられたって思ってんだろ? なら、最後まで助けられてろ」

「凛太郎様……」

 

傷ついてほしくない想いよりも守ってくれるという嬉しさが乙女の気持ちを上回った。

凛太郎の手を握りしめて見上げる乙女と凛太郎と目が合った。

乙女が凛太郎の名前を呼び、目を閉じようとした時。

 

「そこに誰かいるのか!」

「「!!!」」

 

二人して息を潜める。

凛太郎は乙女を自分の背中に隠し、追っ手が来るのを今か今かと待ちわびる。

足音がだんだんと近づいてくる。

それにともなって乙女の手がぶるぶると震えて凛太郎の服をつかむ。

その感触を感じ取った凛太郎は大丈夫と笑って振り向いて乙女の手を握る。

従者が二人の隠れている岩かげに差し掛かったところで、凛太郎は勢いよく飛び出した。

従者は突然の出来事に目を丸くしたが、援軍を呼ぼうと声を出そうとする。

そうはさせじと凛太郎は超速で相手に迫り、強力な一撃を相手の腹めがけて打ち込む。

ドスッ。

しかし、凛太郎の一撃が強力すぎたのか相手は勢いよく吹っ飛んでしまった。

 

ドゴオオォォォン!

 

地下牢への出入り口から勢いよく何かが飛んでいき、大音量とともに城の壁に突き刺さる。

乙女を探し回っていた一同は捜索を中断して音のする方へとわらわらと集まってくる。

その光景を遠目に見ていた凛太郎はあーあ、やっちまったなぁという何とも言えない顔で乙女に話しかける。

 

「悪りぃ、目立っちまった。悪いが乙女はここに残ってくれねぇかな。俺があらかた蹴散らしたあと、こっそりとここを出て窃盗犯が誰なのか探ってくれ」

「わかりましたわ。陽動作戦ですのね」

「まぁ、そんなところだな」

「凛太郎様、お気をつけてくださいな」

「ああ、乙女もな」

 

そう言い残して凛太郎は地下牢への出入り口から勢いよく飛び出していった。

 

 

 

浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 推理編へ続く

 

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リアル友なし・非モテ・コミュ障・中二病・ヒキコモリ・ゲーム廃人。

運命のライトノベルに出会い、作家を目指してブログで物語を書いている。

頭の中は常に中二妄想でいっぱい。

コメント返信に命をかけている。

実は、2児のパパで女王様(嫁)の召使いもしている。

詳しいたらこの生態を見る「プロフィール

たらこ

 

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