2017/09/08

浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 乙姫出会い編

 
浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 乙姫出会い編

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前回のあらすじ。

 

浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 亀出会い編

いじめられていた亀をさっそうと駆けつけて助けた浦島凛太郎。

しかし、亀がしゃべるという衝撃の事実を目の当たりにした凛太郎は腰を抜かしてしまう。

カッコイイのかビビリなのかよくわからない凛太郎は、大きなウミガメにお礼をさせろと迫らる。

そのお礼がリュウグウ王国へ連れて行くというものだった。

水中でも呼吸できるように亀から鬼微団子(きびだんご)をもらった凛太郎は亀とリュウグウ王国を目指すのであった。

 

浦島凛太郎

 

凛太郎の仕事は漁師なので海の中も見慣れていた。

しかし、凛太郎は今、絶景を見ていた。

 

青い海がどこまでも透き通っていて、辺りでは色鮮やかな魚たちが泳いでいる。

海底では赤や緑や黄色のサンゴ礁がゆらゆらとダンスを踊っているようだ。

上を見上げれば、幻想的な青と水色のコントラストが太陽の光によってより際立っている。

 

「すげぇ」

 

まるで異世界にでも来たような感覚の凛太郎はその言葉以外出てこなかった。

 

「うふふ、喜んでもらえて何よりですわ」

 

亀は満足そうに笑顔で応える。

 

そして亀は、少し恥ずかしそうにしながら凛太郎に手を伸ばす。

凛太郎も自然と亀の手を取って、二人絶景を並んで泳いでいく。

 

「こんな海があるなんて、ホントにここは地球なのか?」

凛太郎はぼそっとつぶやいた。

亀は凛太郎の言葉を聞き取って首を傾げていた。

「……地球?」

 

 

色とりどりの巨大なサンゴ礁を抜けた先に大きなお城らしきものが見えてきた。

凛太郎は目を丸くした。

今まで亀が喋ったり鬼がいると言ったり驚かされることは多々あったが、海底に都市があるなんて、もはや都市伝説級の、いや世紀の大発見だ。

凛太郎の口は海に入ってから開きっぱなしだ。

そんな凛太郎に亀は終始満足そうだった。

 

「リンタロー様! 見えてきましたわ。あれが、わたくしの……あっ、いえ、わたくしたちの住むリュウグウ王国ですわ」

 

近づくにつれてリュウグウ王国らしきものがはっきりと見えてきた。

 

「うわぁ」

 

凛太郎は眼下に広がる都市に感嘆する。

凛太郎がイメージしていた童話的なものではなく堂々たる都市だった。

海底の石を積み上げて造ったらしい建物が円周状に立ち並んでいた。

真珠色に輝く外壁に色鮮やかなサンゴや貝殻が装飾されていて、幻想的な都市に一役買っている。

水中ゆえの浮力を利用しているのか、地上では建築不可能な逆円錐状ぎゃくえんすいじょうの建物や複雑に絡み合ったアーチなどが目立つ。

そして、都市の真ん中に建つ城はどこまでも高い。

 

 

都市の一角に降り立った凛太郎と亀は城に向かって歩いていた。

建物から顔を覗かせているのは人……ではなく、耳の部分がヒレで出来ていた。

人ではない女の子は凛太郎たちを見るとシュンっと建物の中へ逃げていった。

凛太郎が不思議に思っていると亀が答える。

 

「ここに人が来るのはめったにないことですからね。皆さん、驚いてるんですわ」

「めったにってどのくらい?」

「そうですわねぇ、1500年くらい昔に一人来たことがありますわ」

「1500年前!? どんだけ昔なんだよ」

「うふふふ……ずいぶん前のことですわ……」

 

亀は少し影のある笑顔を凛太郎に向けて答えた。

凛太郎もそれ以上突っ込んで聞くことはしなかった。

話題を変えるように凛太郎は亀に質問した。

 

「さっきの子供って人じゃない……んだよな? 俺と変わりないように見えたけど」

「ええ、彼女は人魚マーメイドですわ」

 

「マ、マ、マーメイドォォォ!」

 

凛太郎は今日何度目とも分からない驚愕の顔をして叫ぶ。

 

凛太郎たちのやり取りを物陰から隠れてみている女の子は確かに人ではなかった。

下半身は魚の尾ひれがついていて、上半身は人型の女の子の姿だった。

胸に申し訳程度の布切れを巻き、耳の部分がヒレで出来ている以外は人間とさほど変わりないようだ。

童話に出てくる人魚そのものだった。

 

凛太郎の絶叫に慣れたのか、亀は説明を続ける。

 

「彼女たちは数少ない種族ですわ。そして海一番の泳ぎ手でもありますわ」

「マ、マーメイド……ホントにいるとは……」

 

凛太郎は小声でそうつぶやいた。

確かにしゃべる亀がいるくらいだ、マーメイドがいてもおかしくない。

それに、鬼もいるって話だし、この分だといよいよもって城の中にいるのは例の彼女なのかと、乙な姫なのかと思案していると亀が目的の場所についたことを知らせてくれる。

 

「着きましたわ。リュウグウ王国王城『リュウグウ城』」

「でっけぇぇ」

 

首が痛くなるくらい上を見上げる凛太郎はその言葉以外出てこなかった。

 

 

中はものすごい豪華絢爛になっていると思いっていたが、意外と簡素な感じだが、ひと目で高級品と分かる置物や品位を失わない内装になっていた。

 

「リンタロー様、こちらで少し待っていてくださいませんか?」

「ん? ああ、わかった」

 

一際大きな扉の前まで案内した亀は凛太郎に少し待つように言いそのままどこかへ行ってしまった。

少しすると、ギギギっと扉を開ける音がして大きな扉が開かれた。

 

中からは礼装に身を包んだ魚が泳いできた。

 

「こちらへどうぞ」

 

と手短に伝えてきた魚は凛太郎を部屋の真ん中まで案内する。

魚もしゃべるのかぁ、いや、しゃべって当然かぁと納得する。

凛太郎より一回り大きいマンボウが礼装に身を包んでいるのはなんともシュールだ。

 

泳いでいるのか歩いているのか曖昧な感覚にもだいぶ慣れてきた凛太郎はマンボウのあとをついていく。

部屋の中央まで来た凛太郎は正面に立つ美少女に目を奪われた。

凜太朗に向けて深々とお辞儀をして誰もが見惚れる太陽のような笑顔で出迎えてくれた。

 

「凛太郎様、わたくしは、乙女と申します。この度はわたくしの大切な友人を助けていただいてありがとうございました。」

「え? あ、あぁ、うん。大したことじゃないから」

 

凛太郎と全く同じ姿ーー人間ーーがいた事に驚きを隠せない。

その場に亀がいたら速攻で聞いていただろうが、今は亀がいない。

 

それにしても、かわいいという言葉以外見つからない。

サラサラの黒髪を後頭部でお団子に結び、ミニポニーテールになっている。

身長は凛太郎より少し低く、パッチリとした目は可愛さを強調するように少したれ目気味で、凛太郎をじっと見つめる上目遣いは悩殺必死だ。

抱きしめると壊れてしまいそうな華奢な体に似合わず、着物の上からでもわかる豊満な胸の膨らみ。

 

一言で言うと、ロリ巨乳。

うん。この言葉に尽きるか。

しかし、仕草一つ一つが上品で、お嬢様を連想させる。

 

 

しばらく乙女に見とれていると、乙女は気恥ずかしそうに凛太郎に言う。

 

「え、えっと、凛太郎様? わたくしの顔に何か……」

「あんまりにもかわいいからつい見とれて……あっ! いや、その……」

 

思ったことを口にしてしまって慌てて隠そうとするがあたふたとしてしまう凛太郎。

乙女もかわいいなんて言われたものだから顔を真赤にしてうつむいてしまう。

 

凛太郎は照れ隠しするように話題を変えた。

 

「え、えっと、そう言えば、あの亀さんはどこ行ったのかなぁ? なんて」

「……あ~、え~っと、自分の仕事に戻るっておっしゃってましたわ」

「……? ケガって大丈夫なの?」

「え、ええ、凛太郎様のおかげで良くなったっておっしゃってましたわ」

「……? そ、そうか…」

 

乙女の話し方にどこか聞き覚えがあったが、ここの国の話し方なのかと納得した凛太郎だった。

一方乙女はというと何かと落ち着きがなくそわそわとしていた。

そんな乙女に臣下のダイオウイカ(礼装着)が報告に来た。

 

「乙姫様!乙姫様! 宴の準備ができました」

「まぁ、わかりましたわ。ありがとうございますわ」

 

そわそわとしていた乙女は臣下の報告を受けて笑顔で答えると凛太郎に提案する。

 

「凛太郎様、わたくしの友人を助けて頂いたお礼に宴を用意しましたわ。ぜひ参加してくださいな」

「宴? いいのか?」

「もちろんですわ。凛太郎様のために用意した宴ですもの」

 

乙女は満面の笑みで答える。

凛太郎も別段断る理由もなかったので宴に参加する意志を伝える。

 

 

 

宴に招待された凛太郎は目の前の光景に唖然とした。

どこかの大劇場を思わせる一部屋にはここぞとばかりにたくさんの食べ物が並んでいる。

どこで取ってきたのか海には存在しないはずのフルーツの山。

これまた海には存在しないだろう脂のノッた骨付き肉の群れ。

見ただけでよだれが出てくるほどの美味しそうな料理の数々。

舞台上では綺麗なマーメイドたちがダンスを踊っている。

ホールの窓が全面ガラス張りになっていて、海の中の景色が一望できた。

まさに海の楽園。

 

宴は立食パーティー形式で自分で好きな料理を好きな分だけ食べることが出来る。

どれから手を付けていいか戸惑う凛太郎に乙女がおすすめを仕分けして渡す。

凛太郎は乙女にススメられて料理に手を付ける。

 

「んめえぇぇ!」

「ふふふ、お口にあって何よりですわ」

 

凛太郎が至福この上ない表情で料理を口に運ぶ。

乙女も凛太郎の表情に大満足でかわいく笑っていた。

 

程なくしてどこからか音楽が鳴り出した。

魚たちがマーメイドとペアを組んで踊りだした。

ヒレを使って器用にマーメイドをリードしている。

社交ダンスの知識など全くない凛太郎だが、それでも見とれてしまうくらい美しいダンスだった。

 

乙女がそわそわとして意を決したように凛太郎に尋ねる。

 

「り、凛太郎様はダンスなどはされますの?」

「いや、全くわからないかな…そういうのとは縁遠い生活だったから」

「……そう、ですの」

 

残念そうな声でうなずく乙女は無理をして作った笑顔で凛太郎に言う。

 

「ぜひ、楽しんでいってくださいね」

「……うん、ありがとう」

 

凛太郎は乙女の表情に疑問を浮かべたが、特に気にすることなく答える。

二人はしばらく魚とマーメイドたちのダンスを見ながらごちそうに舌鼓をうった。

 

 

するとマーメイドの一人が凛太郎のもとへ来て凛太郎にダンスの申込みをしてきた。

 

「凛太郎様、私と一曲踊ってくださいませんか?」

「いっ! お、俺? 踊りとかやったことないんだけど」

「そうでしたか、でも大丈夫でございます。難しいものではありませんので。ダメ……ですか?」

「いや、ダメってわけじゃないんだけど、俺でいいの?」

「はい! 私は凛太郎様と踊ってみたいです」

「じゃあ、お願いするよ」

 

凛太郎はキレイなマーメイドにダンスを教えてもらうことになった。

そのやり取りに乙女はオロオロとして、凛太郎に届かないくらいの小さな声で。

 

「……あっ、あの……」

「ん?」

 

乙女の声を聞き取った凛太郎はふと振り返った。

突然凛太郎と目が合った乙女は慌ててうつむきながら。

 

「あ、えっと、気をつけてくださいませ」

「うん、ありがとう」

 

マーメイドに手を引かれてダンスホールに向かう凛太郎と自分の手を交互に見やって小さくつぶやいた。

 

「…わたくしも思い切ってお誘いすればよかったですわ」

 

凛太郎のダンスは不慣れながらもマーメイドをリードしてなんとか形になっていた。

マーメイドのアドバイスを必死にこなそうと凛太郎は必死になって踊っていた。

 

「凛太郎様、次は左からお願いします」

「わ、わかった」

「もっと腰をしっかり持ってください」

「う、うん」

 

凛太郎は恐る恐るマーメイドの腰の辺を持つ。

女慣れしていない凛太郎にとって女性に触れることすらためらわれるのだが、マーメイドは美人な上に腰のあたりは素肌が出ている服装だった。

 

少し照れくさそうな顔をしてマーメイドと踊る凛太郎を見ていた乙女は複雑な顔をしていた。

 

 

 

ひとしきりマーメイドとのダンスを楽しんだ凛太郎は乙女の元へと戻ろうとしたが、そこに乙女はいなかった。

 

「えっ? 乙…女?」

 

 

 

→ 浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 乙姫vs人魚編へつづく。

 

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リアル友なし・非モテ・コミュ障・中二病・ヒキコモリ・ゲーム廃人。

運命のライトノベルに出会い、作家を目指してブログで物語を書いている。

頭の中は常に中二妄想でいっぱい。

コメント返信に命をかけている。

実は、2児のパパで女王様(嫁)の召使いもしている。

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