浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 真実編

 
浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか?真実編

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前回のあらすじ

 

前話「浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 推理編

捜索隊の前に現れた凛太郎。

牢から脱走した凛太郎に捜索隊は襲いかかる。

しかし、なぜかパワーアップした凛太郎は全て蹴散らしてしまう。

そこへ、イーカ大臣が現れて、凛太郎は彼を窃盗犯と推測する。

イーカ大臣と凛太郎の論争はついに決着がつかず、戦闘によって決着を着けることとなった。

凛太郎とダイオウイカのイーカ大臣との最終決戦がーー今、始まる。

 

浦島凛太郎

 

凛太郎もイーカ大臣も一歩も動かず相手の出方を伺っている。

互いに構えたままにらみ合いを続ける。

先程の捜索隊との戦闘でクレーターとかした壁の一部がボロっと剥がれ落ちたのを合図に凛太郎が動く。

浦島流格闘術ーー「瞬歩」

瞬間移動にも匹敵する移動手段「瞬歩」

一瞬にしていーか大臣の背後を取った凛太郎はがら空きになっている首に手刀を打ち込む。

しかし、討ち取った感触はなく、凛太郎の目からイーカ大臣の姿がゆらりと揺れて消える。

 

(残像!?)

 

イーカ大臣の姿を見失った凛太郎はバッと振り返りあたりを見回す。

そこに大臣の姿はなく、突如凛太郎の真横から空気が揺らぐ。

凛太郎は反対側へ大きく飛びその場を離れる。

先程凛太郎がいた場所にはイーカ大臣が手に持っていた槍を薙ぎ払ったポーズでいた。

すんでのところでイーカ大臣の攻撃をかわした凛太郎の左腕からは、ぽたり、ぽたりと血がしたたり落ちていた。

切られた左腕を抑えて凛太郎は今のやり取りを思考する。

 

(速さで上をいかれた? それに、俺が追いきれなかった?)

 

凛太郎の顔から余裕の表情が消える。

それを見たイーカ大臣は笑みを浮かべて言う。

 

「よくぞ反応されましたな」

「くっ!! なかなか速いな。次は全力で行くぜ」

 

引きつった笑みを浮かべ凛太郎はイーカ大臣を見据える。

フッとイーカ大臣の姿が揺れるのを見た凛太郎は全力で後ろへ飛んだ。

凛太郎の体にかまいたちのうような風圧が押し寄せる。

強烈なイーカ大臣の一振りが凛太郎に襲いかかるが、服を斬られただけで致命傷は免れた。

それからイーカ大臣は何度も凛太郎に斬りかかった。

大上段からの振り落とし、真一文字のなぎ払い、衝撃波を生むほどの刺突。

時織り交ぜられる回し蹴りや槍の柄での打撃。

凛太郎はどれも回避するだけで精一杯。

いや、完全に回避できない時もあり、その体に切り傷を増やしていく。

まるで、血塗られたダンスを踊っているように凛太郎はダメージを受け続ける。

凛太郎はイーカ大臣から間合いを取るべく大きく後退する。

30メートルほどの距離を取ったところで、凛太郎は大きく息を乱す。

圧倒的に優位に立っているイーカ大臣はその表情を見てニッと笑みを漏らす。

 

「逃げるのだけは得意なようですな」

「ははっ、あんたのスピードにもだいぶ慣れてきたとこだ、だが、素手じゃキツイみたいだからこいつを使わしてもらおうかな」

 

凛太郎はそう言って、先ほど倒した捜索隊の背中に装備されていた刃渡り120センチもの大型の太刀を拾い居合の構えをする。

それを見たイーカ大臣は更に笑みを浮かべて胸元に手を入れる。

 

「たしかに凛太郎殿の速度には目をみはるものがありますが、これで私の勝利が揺るがないものになりますな」

 

そう言ってイーカ大臣は胸元から白い玉を取り出して口に入れる。

 

「それは……」

 

その白い玉に見覚えのある凛太郎は口を開く。

 

「くくくくっ、凛太郎殿も知っているはずですな? 鬼微団子きびだんごーー鬼の力を手にすることが出来る伝説のアイテム。凛太郎殿はすでに1つ口にしておられますな」

「ああ……」

 

確信を持って告げるイーカ大臣に怪訝そうに答える凛太郎。

 

「なぜ知ってるのかという顔をしておられますな。何、簡単なことですよ。人間である凛太郎殿が海底で無事でいられるはずがないのですからな。それに先程捜索隊を倒した力も鬼微団子の効果によるもの。ならここで私がもう一つ口にするとどうなるかお分かりかな?」

 

(そういうことか、この力は団子の効果だったわけか)

 

凛太郎は自分の手を見て納得する。

それと同時にこの先の戦いを危惧する。

 

「ああ、今の倍は強くなるだろうな」

「正解ですぞ」

 

イーカ大臣は答えると鬼微団子を口に入れた。

 

 

 

乙女は走っていた。

まっすぐに”ある部屋”を目指して息が切れるほど必死に走っていた。

しばらくすると目的の部屋が見えてきた。

少し扉が開いていたので乙女は不思議に思い、おそるおそる扉から顔を覗かせる。

 

「誰もいない……」

 

乙女は小さな独り言をつぶやいて部屋の中へ足を踏み入れた。

リュウグウ王国の女王である乙女でもってしても足を踏み入れるのは今日が初めての部屋。

その部屋の主はリュウグウ王国大臣統括事務官イーカ大臣、その人であった。

女王である乙女の直属の部下、事実上のナンバー2。

政治や経済や外交に未熟な乙女に変わって指揮を執り続けて何千年。

気の遠くなるような時間をリュウグウ王国のために捧げてきた男。

乙女が最も信頼していた男でもあった。

しかし、乙女は彼を疑った。

奇しくも先程凛太郎がイーカ大臣に語った推測を乙女も聞いたからだ。

疑い半分で、まさかという思い出大臣の部屋へと訪れたのである。

部屋を物色すること数分、乙女は見つけてしまった。

この国の、リュウグウ王国に伝わる伝説の家宝『多魔手箱』を。

 

「うそ……」

 

未だに信じられないという思い出乙女は多魔手箱を手にしながらつぶやいた。

ガタンッ!

乙女の後ろの部屋から物音がした。

 

「だれ?」

 

緊張した面持ちで音のする方へと声を飛ばす。

しかし、返事が返ってこない。

不審に思った乙女は音のする方へとおそるおそる近づいて扉を開けると。

ドサッ!

乙女の足元へ何か大きなものが寄りかかってきた。

 

「きゃあああぁぁぁぁ!」

 

突如得体のしれないものが足に当たって乙女は城中に響き渡るほどの大絶叫を放った。

よく見ると人だった。

正確に言うと人と魚の混合種ーー人魚マーメイドーー、というか遊梨だった。

遊梨の体に目立った外傷はなかったが、こんなところで寝ているのもおかしいと感じた乙女は遊梨を起こすことにした。

 

「遊梨! ねぇ、遊梨、起きてくださいな」

 

何度も体を揺すっているとやがて薄く目を開けて、虚ろな状態で呆けていた。

 

「遊梨、どうしたんですの? どうしてこんなところにいるんですの?」

「えっ、えっ! 乙姫様!? 私、あっ! 凛太郎さーーいッ!」

 

目を覚ました遊梨は少し錯乱状態にあったが、突然の激痛にお腹を抱えてうずくまった。

 

「どうしたんんですの? 大丈夫なんですの?」

 

乙女は何が何やらわからずオロオロと質問することしかできなかった。

乙女と遊梨は長い長い廊下を走っていた。

遊梨から事情を聞いた乙女は最初その話を信じられなかった。

だが、イーカ大臣の部屋から多魔手箱が出てきたという事実が何よりの証拠だ。

 

「大臣が彼の国『鮫島王国シャークアイランド』の刺客だなんて……」

「間違いないわ、先程も言いましたが……」

 

乙女の言葉に遊梨は確信を持って告げる。

乙女は遊梨から聞いた話を思い出していた。

 

 

 

―――イーカ大臣からもらった一撃のダメージが今だにじんじんしているが、少しマシになったお腹を擦りながら遊梨は乙女に自分の知っていることを話し始めた。

 

「私はイーカ大臣の指示で凛太郎様を惚れさせようとしてました」

「えっ!?」

 

乙女は遊梨の第一声に驚くが構わず遊梨は話を続けた。

 

「全てはリュウグウ王国のためだと信じていたからです。大臣は乙姫様が人間である凛太郎様に好意を抱くのを恐れていました」

「……」

「もし、人間と私たち海の種族との間に子供ができてしまったら禁忌の子が王族にいる国として他国から避難が殺到します。そうすると、リュウグウ王国は終わりです」

「それは……」

 

種族を超えて子をなすことは禁忌とされている。

禁忌の子は災いをもたらすと言われていて、禁忌の子は抹殺される運命にある。

その言い伝えは乙女も知っていることで、遊梨の言葉に言葉をつまらせる。

 

「私もリュウグウ王国のためと思って大臣の指示に従っていました。ですが……」

 

遊梨はそれ以上の言葉を続けられずにうつむいて黙ってしまう。

遊梨がそれ以上言わなくても乙女にはわかってしまう。

 

「好き、になってしまったんですのね」

「……」

 

無言を肯定とみた乙女はニッコリと笑って言う。

 

「仕方ないですわ。だって、凛太郎様とってもお優しいですもの」

「…はい」

 

何とも言えない笑顔で答える遊梨に乙女は胸を張って正々堂々と言い放つ。

 

「でも、凛太郎様は譲りませんわ。負けませんからね」

「わ、私だって、例え乙姫様でも譲るつもりはないですよ」

 

二人に友情見たいものが芽生えたが、遊梨がはっとして乙女にイーカ大臣の話をする。

 

「乙姫様、私がもう凛太郎様を陥れることができないと大臣に進言すると『鮫島王国シャークアイランドのスパイになってもらう』って言ってました」

「それが大臣が刺客てあることとどう……」

「その言葉を聞いたすぐには私は気絶させられました。しかし気を失う前に見てしまったのです。大臣の肩に鮫島王国の刺青タトゥーを」

「そんな……」

 

遊梨の言葉に乙女は顔を真っ青にして驚きをあらわにする。

 

「鮫島王国民は皆体の一部にサメが王冠をかぶった刺青タトゥーがあります」

「そうですけど…」

「私の言うことが信じられないならそれでもいいです。ですが、このままでは凛太郎様がリュウグウ王国の人たちに襲われてしまいます」

 

遊梨は必死に説得する。

自分のことはどうでもいいから凛太郎のことは、凛太郎だけは助けてやりたいと。

凛太郎が襲われると聞いた乙女は、はっとして遊梨にの言葉に耳を傾ける。

今しがた遊梨に対して全世界を敵に回すことになっても凛太郎のことは譲らないと言ったばかりではないか。

これでは先が思いやられる。

乙女は自分の心にバカバカと言って遊梨に答える。

 

「わかりましたわ。凛太郎様を助けましょう」

 

二人はうなずき合って凛太郎の元へと走り出す―――。

 

 

 

早く、早く凛太郎様のところへ、と必死に走っていると隣から話しかけられる。

 

「乙姫様、お先に失礼します」

 

遊梨はそう言って一礼をして乙女を置き去りに爆進した。

遊梨は水を体中にまといその中を泳ぐ。

人魚は海の中で最速の種族だ。

段々と見えなくなっていく遊梨の姿を必死に追いかける乙女の耳に悲鳴のような雄叫びのような大声が聞こえてきた。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

凛太郎は己の目を疑っていた。

目の前で人が進化する姿を目撃していたのだ。

進化というか肉体の変化を目の当たりにしていた。

二つ目の鬼微団子を口にしたイーカ大臣の体がみるみるうちに筋骨隆々になって雄叫びを上げた。

上半身はボディビルダーも裸足で帰ってしまうようなゴリゴリのマッチョ。

下半身はダイオウイカの名に恥じないゴツゴツした何本もの触手。

はっきり言ってしまえば、もう化物としか形容できない。

そんな化物――イーカ大臣の周りの大気が震えている。

 

「ははっ……」

 

凛太郎は引きつった笑みを浮かべて身構える。

一通り叫び終わったイーカ大臣は姿勢を低く、片手クラウチングスタートの構えをして凛太郎めがけて突進する。

音を置き去りにした超加速。

凛太郎はとっさに横っ飛びするが、凄まじい風圧にそのまま壁まで吹き飛ばされてしまう。

ズゴオオオオオン!

 

「ごふっ!」

 

壁に特大のクレーターを作った凛太郎は意識を保つのに必死だった。

ただのパンチによる風圧で凛太郎は何十メートルもふっとばされた。

 

(たとえ避けたとしてもこのダメージだ。ちょっと詰んだかも)

 

凛太郎は半ば諦めかけていた。

追撃が来たら間違いなく終わっていた凛太郎だが、イーカ大臣の追撃がなかった。

壁に埋もれたまま顔だけをゆっくりと上げると、手を突き出したまま肩で息をしているイーカ大臣の姿が映った。

 

「あ…れは…..?」

 

凛太郎の中で一つの仮説が浮かび上がる。

 

(鬼微団子には副作用があるのではないか?)

 

超加速と爆裂パンチを繰り出したイーカ大臣は肩で呼吸しながらゆっくりと凛太郎の方へ視線を飛ばす。

 

「よくぞ、かわしましたな……」

 

イーカ大臣がニッと口を釣り上げてたかと思うと姿が消えた。

まだ壁に埋もれたままの凛太郎は大臣の突撃を避けるすべがない。

 

(ここまでか……)

「もらったああああぁぁぁっ!」

 

ズゴオオオオオオン!!!

 

部屋中に爆煙が舞い上がり、壁の半分以上には巨大な穴が空いていた。

まともにくらっていたら原型すら留めないだろう超一撃。

力の大半を使ったのかイーカ大臣は肩を大きく揺らして爆煙の中を睨んで動けずにいた。

大きすぎる力、鬼微団子の副作用がイーカ大臣の反応を致命的に遅らせた。

背後に殺気を感じたが振り向くだけで精一杯だった。

気づけば凛太郎の拳が頬にえぐりこまれていた。

 

「ぶはっ!!」

 

イーカ大臣は回転しながらふっとばされる。

 

(何が……)

 

確実に仕留めと確信していたイーカ大臣の顔が驚愕に染まって凛太郎を見た。

そこで大臣は見知った顔を目にして口を開く。

 

「な、なぜキサマが……」

「凛太郎様、あいつぅなんか驚いてますよぉ~ふふふっ♪」

「渾身の一撃だったんだけどなぁ、全然効いてないみたいだな、さて、どうするか」

「大丈夫ですよぉ、凛太郎様ならあんなヤツ軽くひとひねりですぅ」

「ははっ、無茶言ってくれるな遊梨は」

 

何事もないように会話を続ける凛太郎と遊梨にイーカ大臣はわなわなと震えて吠える。

 

「なぜ、なぜキサマがここにいるんだあ! あの時気絶させたはず……」

 

壁に埋もれた凛太郎を間一髪助けたのは遊梨だった。

イーカ大臣の一撃が凛太郎に届く刹那、水中を亜音速のスピードで泳いできた遊梨に助けられたのだ。

助けられた凛太郎も驚いていたが、遊梨が「今です!」とイーカ大臣の方を向いて言うので「ありがとう」と一言残して凛太郎はイーカ大臣に駆け出していったというのが事の真相だ。

イーカ大臣の言葉を受けて遊梨はあざ笑うかのように言う。

 

「ツメが甘いんですよぉ~」

「くッ――!」

 

僅かに顔を歪ませるイーカ大臣はそれでも自分の勝利を確信したかのように笑みを浮かべてる。

 

「たとえキサマが邪魔したところで何の状況も変わってませんぞ」

 

たとえ遊梨が来たところで凛太郎の攻撃はイーカ大臣には効かない。

先程放った凛太郎渾身の一撃もイーカ大臣に致命傷を追わせるどころか傷一つ付いていない。

だが、そんなこと知ったことじゃないというふうに遊梨がイーカ大臣に言い放つ。

 

「そんなことはないですよぉ、私を誰だと思っているんですかぁ? 私と凛太郎様がそろえば最強ですよぉ♪」

「たかが人魚の分際で、何を言ってるかと思えば……」

「そのぉたかが人魚に一杯食わされてのはどなたでしたっけぇ? それにぃ私の速さをあまりナメないでいただきたいですねぇ」

 

そう言って遊梨は凛太郎の腰に手を回す。

突然密着させられたことに顔を赤くする凛太郎だったが耳元で遊梨が「私が凛太郎様の足になりますぅ」と言ったことで顔を引き締める。

 

「ああ、二人であいつを倒すぞ」

「はい!」

 

ニッコリと笑って凛太郎の勝利を疑わない遊梨は臨戦態勢に入る。

 

 

 

浦島太郎はなぜ乙姫を攻略できなかったのか? 後編へ続く

 

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リアル友なし・非モテ・コミュ障・中二病・ヒキコモリ・ゲーム廃人。

運命のライトノベルに出会い、作家を目指してブログで物語を書いている。

頭の中は常に中二妄想でいっぱい。

コメント返信に命をかけている。

実は、2児のパパで女王様(嫁)の召使いもしている。

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たらこ

 

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